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コンクール

 

Kanon投稿

数多くの“柿の思い出”が集まりました。

「かぶちゃん農園『柿の思い出』コンクール」
結果発表

“農村から楽しさを”をコンセプトに、長野県から安心でおいしい食物を提供している『かぶちゃん農園』。南信州の自然が育んだ伝統の干し柿『市田柿』の生産・販売に取り組んでいるかぶちゃん農園主催の『柿の思い出コンクール』の応募が1月31日に締め切られました。たくさんのご応募、ありがとうございました。審査員の朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられておりますので、賞とともに発表いたします。
グランプリ  

伝統の柿ののれんの風物詩秋日優しく軒を潤す

(長野県・遠藤夙子)

遠藤さん、入選おめでとうございます。一首全体に流れる五七五七七の音律はおだやかながら、歌意が堂々と底支えをしており、安心して観照いたしました。特に下句七七のやわらかな情感が良かった…。秋の日を優しいと受けとめたときの作者の脳裡には、人々の毎日の暮らし、作業の工程、時間、そして親しんできた古里の果実の豊かさなどなどが去来したのではないでしょうか。結句の『軒を潤す』は、それらの思いを包んでこの一言に吸収され、ほのぼのと風物詩のイメージは広がったのです。伝統への信頼、故郷をありのままに受けとめ、慈しむ心が自ずからの輝きとなっておりました。

準グランプリ  

夕鐘の余韻に揺らぐ柿明り

(神奈川県・新井康村)

一読、明るい秋の夕暮れが見えてきます。寺院で、どなたが撞くのか、鐘の音が響き、その韻が何とも慕わしげに空気をふるわせて空に広がるとき、たわわに稔っている柿の実がかすかに揺らぐのが見える…。その景色はゆったりとしたイメージとなり、涙ぐみたくなるような、ふるさと回帰への思いを誘うのです。柿明りの温かさと鐘の包みこむような音色、それも余韻だからいい。俳句の醍醐味です。

夫癒えて信濃の旅の柿日和

(茨城県・木村小夜子)

旅の思い出の一句。ご主人の病が癒えてホッと安堵する作者が素直に表現されております。初句五音にこもるこもごもの思いは、『柿日和』というえも言われぬ結句の和みの季語に呼応して完成した句です。もう何もいらないけど、ふたりでゆく信濃路の柿のある風景は明るく、さわやかな秋だった。長い人生の歩みをしみじみと振り返り分かち合う今の時間を惜しむ旅の深さ、良さ。柿は幸せの彩り。そんな気分が彷彿する作品です。

ひたすらに柿むく祖母の手とわれの苦労をしらぬ手を見くらべる

(広島県・たまこ)

20代の若い方の作品。初々しい表現と感動がありました。良き未来への感動を覚えます。『ひたすらに…』の初句には、柿の皮をむく動作を黙々と続けておられるおばあさまの辛抱強さに驚いている作者の心が見えてきました。おばあさまの手の皺の隅々に深い歳月を見たとき、一瞬に、自分の手を比べ、まだ ―働き尽くしきれていない若者の手― だと気づいてしまった。下句の『苦労をしらぬ』の七音が尊い詠嘆であると思います。率直な感動がすてきでした。

今回、約2700作品ものご応募をいただき、優れた作品も多数寄せられました。グランプリ、準グランプリには選ばれなかったものの、短歌、俳句それぞれ7作品をご紹介します(順不同)。

短歌  

柿明り夕べのあかり雪明り幼年の日が瞬きはじむ  (神奈川県・堀部知子)

木守柿一つ残れる裸木の梢を照らす十六夜の月  (群馬県・須藤紗和)

実るなく枝をはなれし青柿の落つる音して蝉の声止む  (福島県・鈴木益二郎)

炭窯に火入れ全し柿の花こぼれる谿に手を洗うなり  (埼玉県・中山かつ)

干し柿の縄編む父の魔法の手鼻すすり見ていた幼い日  (東京都・優子)

肩書きの無き身となりて一人旅干柿(かき)の簾に偲ぶ故郷  (東京都・久保親二)

母からの夕焼け色の柿の実が宅配便の箱にあふるる  (東京都・林由実)

俳句  

つるし柿異次元の色宿しけり  (千葉県・下村洋子)

丹精の柿干し上がる神の御饌  (埼玉県・常木きく代)

串柿の鎧きららや伊那の郷  (神奈川県・木下辰雄)

つるし柿いちばん星の見えかくれ  (三重県・久留一枝)

山の子に風のララバイ吊し柿  (千葉県・生田高子)

深廂華やぎ拡げ柿簾  (滋賀県・英華)

吊るし柿ずしりと村の平和かな  (神奈川県・北村純一)

審査員からのコメント

2000以上の数多い俳句・短歌作品を寄せていただきました。驚きながらの観照・選考でした。柿の歴史は古く、中国揚子江流域の野生種が原産で、日本でも栽培された…という説がありますが、元来、はるかより同属の野生種がわが国にも自生していたと文献にあり、「日本の故里には柿の木のある風景が似合う」と文章もあるように、日本人と柿とのかかわりは深く、暮らしの中にあったのです。(正倉院文章等)木守り柿・干し柿・柿明り・柿のれん・柿しぶ・柿いろ重ね・柿日和等々の懐かしい柿ことばにまつわる“風物”がたくさんありました。そして今も現代人の心身を養い、健やかに、しみじみと老いてゆくまで、人生の大事な句読点の彩りである、柿の温かさ豊かさを句・歌に託し、お寄せくださったお一人お一人の心に敬意を表します。

賞品

グランプリ 特選市田柿(27個入)1箱+『かぶちゃん農園』の合鴨米1年分(約60kg)
準グランプリ 特選市田柿(15個入)1箱+『かぶちゃん農園』の合鴨米(5kg)
参加賞(応募者全員) 『かぶちゃん農園』の二十穀米(30g)×1袋(*1作品ではなく、1名につき1袋となります。)

審査員

朝倉富士子

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。