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コンクール

 

Kanon投稿

数多くの作品が寄せられました。

『鎌倉詩歌祭 俳句・短歌コンクール』
結果発表

“鎌倉”“平和”をテーマにした俳句・短歌を募集した『鎌倉詩歌祭 俳句・短歌コンクール』の応募が7月6日に締め切られました。たくさんのご応募、ありがとうございました。俳句・短歌それぞれの入選作と、大賞・特選作品に対する選評を発表いたします。

<俳句>

大賞  

江ノ電の中まで草の穂絮かな

(福島県・佐藤幸子)

江ノ電は人家の側を通る非常にかわいい電車です。鎌倉を愛する俳人、高浜虚子もかつて江ノ電の音が聞こえる近所に虚子庵を結んでいました。江ノ電は鎌倉とは切っても切り離せないものですね。“草の穂絮”という言葉からは、秋の様々な草が想起されます。下句は色々な解釈ができ、乗客が草の穂綿をくっつけて電車に乗ってきたのか、または周辺の風景のなかのものが入ってきたのか…鎌倉ならではの句ですね。

特選  

爽やかに覚め鎌倉でありしかな

(兵庫県・小西真子)

大人っぽい句ですね。“爽やかに”が秋の澄んだ空気を示しています。作者は転寝をしていたのでしょうか。目が覚めて「ああ、今、鎌倉にいるのだ」という気持ちが、“ありしかな”と過去形ですっきりと表現されています。言葉数が少なく、肝心な部分がきりっとしていて、最も伝えたいことが伝わる句です。

葛切やみどりの中の椅子一つ

(栃木県・味原サイ子)

こちらはいかにも涼しげな句です。“みどりの中の”とあるように、そういう自然に囲まれた場所に椅子を持ち込んで葛切を食べているのでしょう。葛切と、作者が座っていらっしゃる椅子という本来縁の無いものを組み合わせて、みずみずしい風景を作り出しています。俳句ならではの表現ですね。

日に縋り雨に縋りて額の花

(北海道・山下松寿)

額の花はアジサイとは少し趣が異なりますが、非常に美しい花です。この句は、額の花が育っていく過程でもあり、また万物が育っていく過程でもあるのでしょう。太陽と雨と風がなくては、額の花は育たない。その様子を、額の花以外のものも含めて、このように美しいものが出来たと表現しています。くりかえし表現がさっぱりしていて良いです。

佳作  

福笹の先が誰彼にもふれて  (京都府・吉田藤治)

鎌倉に抜け道多し寒椿  (神奈川県・安田信男)

あじさい寺へ母を連れ出す車椅子  (東京都・石口 榮)

親王の土牢の跡や苔の花  (長野県・春日翠芳)

入梅す大仏の重き腫れまぶた  (滋賀県・水口となみ)

母に逢う八幡宮の銀杏の黄  (滋賀県・西村芳子)

花木五倍子鎌倉を打つ雨の音  (東京都・塩澤幸子)

何事も無くて一日の花木槿  (愛知県・稲葉房子)

鎌倉や紫陽花の咲く頃が好き  (島根県・竹元抽彩)

万緑や五山に天の深かりき  (静岡県・間島あきら)

<短歌>

大賞  

目覚めたら隣りに君がいるのです二人で笑って二人で歩いて

(佐賀県・古賀由美子)

目覚めたら隣に君がいる。新婚の歌とも、長年連れ添った夫婦の歌とも読める。前者だったら新しい出発への喜び、後者だったら当たり前の日々のなかにこそ幸福があることの再発見。歌の口調からは前者が近いと感じる。いずれにしても、“二人で笑って”の次に“二人で歩いて”を加えて、喜びに確かな生活感を与えた。そこが楽しい。短歌は広い意味での歌の一種、一首のリズムが主題と合っていることも大切。その点も評価した。

特選  

鎌倉の人力車曳く若者はメール打ちつつ客を待ちをり

(東京都・禎迷)

鎌倉を散策したときの街頭スケッチといったおもむきの歌。まず人力車がいかにも古都であり観光地でもある鎌倉にふさわしい。その人力車の若者が客を待ちながらしているのがメールというところにも今日的な感触がある。軽いスケッチだが、確かな手応えのある一首として評価した。

目を開く今日という日が来ることを疑わず来て8月6日

(兵庫県・谷許千晶)

朝、眠りから覚めて目を開く。ごく当たり前の日々の第一歩だが、そうした平凡が一瞬にして壊れたのが広島の八月六日と長崎の八月九日。その未曾有の悲惨をどう詠うか。これは悲惨があまりにも大きいだけに難しい。ここでは日付の雄弁さを活用したところに説得力がある。

切通し抜けて蜻蛉を追いかける少年の日はそのままにあり

(神奈川県・右田俊郎)

視野が狭まる切り通しを抜けると風景が一変する。そこが切り通しのおもしろいところだが、鎌倉は切り通しの多い土地。抜けてとんぼを追いかけた日々から、少年時代の鎌倉が生き生きと蘇ってくる。地理的な環境を生かして思い出を確かなものにした。

佳作  

還らざる民のいのちを礎に築きし平和おろそかならず  (福島県・小林きく)

乘りものを使わず巡る鎌倉の雨ふる寺の青きあぢさゐ――明月院  (三重県・久留一枝)

方形の墓碑しづもりて無の一字小津安二郎あぢさゐ浄土  (静岡県・鈴木信一)

国境のない青空の万国旗ともだちの輪よ広がって行け  (京都府・麻倉 遥)

青い星ちきゅうのすがただいちみずへいわと自由とどくといいな  (栃木県・大西真衣)

あの朝もクマゼミきっと鳴いたろと幼子と手をつなぎ上る坂  (徳島県・あいらむ)

沖縄の戦争終えて六十年不発弾処理尚八十年  (福岡県・赤松菊夫)

春の陽に誘われ歩く小町通り炒りたて豆のデミタスコーヒー  (兵庫県・まり花)

雨の日も陽の強い日も風の日も大仏さまがそこにいる事  (埼玉県・円月)

祖父よ父よ戦友という名の朋の無き我等なり忘れ草咲く  (福島県・高木茂子)

賞品

大賞 “山崎秀鴎氏オリジナル書作品”
特選 三義漆器店“じぱんぐ工房 背高飯椀”
佳作 源吉兆庵“ますかっとシャーベット詰合(8個入り)”

審査員

俳句選評・宇多喜代子

(現代俳句協会会長)

短歌選評・三枝昻之

(宮中歌会始選者、NHK全国短歌大会選者)