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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2008年10月25日 第26回 テーマ『愛』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
やや辛きハーブソルトや秋の朝 (俳句)山梨県・にむら浩美
いいですねぇ。まず言語感覚がシャープです。秋の朝の冷涼さが「ハーブソルト」、それも「やや辛き」と強調したことで一層鮮明になりました。臭覚、味覚、そして皮膚感覚が、一句のなかで響きあいながら、俳句ならではの表現の強調を可能にしています。定形を十分に生かし得た作品です。結句の名詞止めと「ハーブソルトや」の“や”の用い方も巧妙です。

特選
ずぼらんと警察庁舎の屋上に襤褸のような日本の国旗 (短歌)新潟県・抹香鯨
初句のオノマトペ風の「ずぼらんと」の表出には驚かされました。漢語の多い一首ですが、この初句「ずぼらんと」が、見事に一首を引っ張っております。「襤褸のような日本の国旗」もまた的確で、鋭い目線です。寺山修司の有名な<…祖国はありや>の哀感にも通ずる乾いた抒情を感じます。

特選
かあさまのあきのにほひやかつぽうぎ (俳句)兵庫県・藻川亭河童
旧仮名で、一気に平仮名読みの一句。見事です。「かあさまの」の初句の優しさが、秋の日なたの匂いや、少しもの悲しい秋の気配を受け止め、結句の「かつぽうぎ」が、あっとひと息に情感を高めてくれました。すてきです。

特選
箱を開け田舎の匂い部屋に満ち (川柳)東京都・小川
一読、ドキリとしました。そこはかとなく漂う、郷愁と存在感。川柳ならではの言葉運びから、気持ちのいい素朴な人生の匂いが立ってくるのです。「田舎の匂い」からは、大地や自然の営みの息吹さえも感じられ、「部屋に満ち」と終止形にしなかったことで、一層明るさが広がるのですね。

佳作
「指定席」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・雪粋

「指定席」

きっと 誰でも持っている
自分の中に 誰かの指定席を
特別で そして ありふれている
そんな 日常の中で
自然と そこにあるんだ
まるで 酸素で出来た椅子のように・・

きらきらと光っている その席は
決して目立つことはなく
和やかに調和しているんだ
ふんわりと優しく伴侶を包むように
遠い昔から
繰り返されてきた 物語の一部だね

きっと 誰もが持っている
大切で特別で・・
だけど ありふれた日常の中に
そっと存在している 指定席

きっと誰でも持っている、自分の中に誰かの指定席を…。特別ではない日常と、遠い昔からのつながりを思いながら、わかりやすい表現に思いを託した手法が良かった。特に「酸素で出来た椅子のように」は優れた表現でした。

佳作
「白い日傘」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)愛媛県・マメ犬マメ子

「白い日傘」

風吹き渡る五月
チカチカ揺れる陽炎
嬉しそうに君は
買ったばかりの
白い日傘を広げ
風光る世界に飛び出してゆく

揺れる日傘の影に
春の風は戸惑い顔
勘違いした夏の風は
立ち止まり大きく深呼吸
急ぎ足で春を追いかける

日向ぼっこしている
青い目の猫
通り過ぎる影に
横目づかいで大あくび
のびたまままどろむ

白い日傘は輝きながら
淡い影を振り撒き
陽炎に揺れながら
小さく遠ざかってゆく
影に入り損ねた僕は
手の届かない君を想う
風吹き渡る五月

「風吹き渡る五月」のフレーズが、初めと終わりに繰り返されて妙。4つのパーツが、白い日傘の動きを導いて、小さな物語が展開する。白い日傘の「影に入り損ねた僕は 手の届かない君を想う」に、ひとつの愛の形を思わせ、佳作。

佳作
「まごころの色」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)徳島県・そがちあき

「まごころの色」

橙色、オレンジ色…(どれも違う気がする)
「あか」「あお」「みどり」「しろ」のように
その色を表すには何と言ったらいのだろう

そう、その色は確かに存在する
家からこぼれ出る灯りと笑い声
厳冬のこたつとみかん
風雪に耐えるレンガ
昔ながらの石油ストーブ
炎から生まれ、労働に育てられたその色は
人工のぬくもり 人間の体温
あの人を迎える私のエプロンの色

作者はまごころの色を思う。この思考こそが詩の始まり。「家からこぼれ出る灯りと笑い声」の色か、「厳冬のこたつとみかん」か…。「あの人を迎える私のエプロンの色」と思いはゆきつく。快い詩。

佳作
たんぽぽの綿毛をとばす幼子のわきに犬おり見守るように (短歌)新潟県・三浦ユリコ
結句の「見守るように」によって、たんぽぽの穂と幼子の愛らしさが、より強調されている。短歌の四句切れの良さが生きました。

佳作
青空の奥の奥なる暗みより寄する波動を愛とは言ふか (俳句)東京都・大和田栄治
青空の奥は、本当は暗く波動が絶えず出ていると知る作者。人間にとっては、宇宙からの愛かと受け止めようとする現代人の智的認識の歌。新しい時代の歌となり得ましょう。

佳作
半分こ大きいほうがキミの分 (川柳)千葉県・スパンク
何と楽しい「半分こ」かと、思わず微笑したくなりますね。素直です。愛が感じられます。“分”の繰り返しが効果的でした。

佳作
孫ができ初めて男とキスをする (川柳)東京都・小川晃弘
男の孫にキスをする作者の、茶目っ気が作らせた一句ですね。川柳ならではの作品となりました。

佳作
野あざみの好きな母もう七回忌 (俳句)三重県・葛家いいち
野あざみが好きというだけで、作者のお母さんの人柄なども思われる一句です。美しい句ですが、どこか切なさが漂い、結句の「もう」が効果的でした。

佳作
星月夜父の瞳に似た星探す (俳句)和歌山県・向 麻由美
満天の星空を仰ぎながら、父の瞳の光を探す、作者の父恋いの情感が悲しくも澄んで伝わります。

佳作
「無題」 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)福岡県・Rono

「無題」

辛いときに思い出す
怒ったあなたの顔や声
怒ってくれてありがとう

作者は25歳。「怒ってくれてありがとう」と率直に表現できたところに良さが出ました。愛に触れ得たことは喜びですね。

選者からのコメント

今回は『愛』という抽象的なテーマでした。4分野いずれにも言えることですが、具体的ななぞらえを上手に用いた場合に、説得力のある作品となるようです。日本語の面白さを探究しながら、ことばの世界で大いに楽しみ、心を遊ばせてみましょう。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。