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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2009年9月25日
第37回 テーマ『白露〜うつろう季節(とき)』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
凪にいて時の風音拾う耳 (川柳)愛知県・猫山
凪の海辺・広い空・流れてゆく時間…作者の耳はいつもより敏感に研ぎ澄まされ、時間が風となる音を拾っている。まるで風音にひょいと動く小動物たちの耳のようだ。五・七・五がうまく機能して心にくいほどの清澄な音律がいい。おめでとう! シャープな感性は川柳を香り高い文学性へと昇華させ得る力となりました。耳はまた浜に打ち上げられた貝などのイメージにもつながり、人が生まれた原初への連想ともなるのでした。

特選
祖母が焼く秋刀魚の煙秋の使者 (俳句)東京都・アオバズク
秋刀魚を焼く秋の風景、街中ではあまり見ないかもしれませんが、昭和の中頃までは一般的な秋の風物でした。『祖母が焼く』の初句はそのへんの事情を表現し、追憶へと読者を導いてくれます。食の文化は時代と共に移ろいますが、人間の手のぬくもり、大衆魚、夕暮れなど混然とした懐かしさへの誘いがあり、佳かった。

特選
陽だまりの眩しさ掬ひて撒き散らす風の背中に秋隠れをり (短歌)宮崎県・雲のまにまに
雲のまにまにさん! 下句『風の背中に秋隠れをり』が発見でしたね。古い歌に〈秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる〉というのがありますが、陽だまりを掬い去る現代の風は細かくも動的で明るく感情の弾みを誘う表現となり、その背後にひそむ歌の気配を敏感に感じた作者の感性と、『撒き散らす』の点描的表現がマッチして快いです。

特選
とんぼうや水面に触れてきらきらす (俳句)奈良県・まりも
『とうぼうや』はなつかしい表現です。江戸時代には“飛ぶ棒”の意でトンボすなわち“あきつ”が俳諧の語に入ってきました。水面に触れるとき、とんぼうは産卵をするのです。それは命そのものの『きらきら』を思わせて、活気のある表現となっております。俳句の妙味が生かされ、やさしい表現ながら季節感があふれて佳かった。

佳作
白き靄切り裂きバイク走らせるエンジンの音遠く残して (短歌)兵庫県・小田慶喜
バイクの走り去る音が聞こえてくるような躍動感を一読して感じます。第二句の『切り裂き』が、効果的。白い靄(もや)のなかを走りながらエンジン音の残響を体で感じているライダーの繊細な感情が伝わる一首となりました。

佳作
『秋の窓』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)滋賀県・永里祐子

『秋の窓』

外壁に 梯子をたてかけ 階段を 登って登って
夏の日差しと夕立に 少し汚れた窓を拭く

過ぎた夏の時間を丁寧にしまう作業のように
ワイパーの水滴が 窓の汚れを拭っていく

美しく磨かれた窓に映る まっさらな秋の空と
ゆっくりと運ばれる白い雲

心地よい風と柔らかな日差しをうけ 磨かれた窓を眺める
いつの間にか 空を磨いていた私は 呼ばれるように雲に乗り
秋の気配を運ぶ使者になる

『秋の窓』、ていねいな詩です。日常のなかからふいと自然のなかへとワープする感覚に詩があり良かった。最後のフレーズ『いつの間にか 空を磨いていた私は 呼ばれるように…』であなた自身が“秋の使者”でした。透明感がよい。

佳作
露しとど水の地球を疑はず (俳句)福岡県・幻草
ああ、そうだった。地球は水の惑星なんだ。ふと、そう思わせてくれる初句の良さ。すんなりと感想を述べているのだが、結句の『疑はず』の断定が実に効果的である。初句の『露しとど』の切れ味にもドキリとする。

佳作
身震いす硬き決意の白露かな (俳句)北海道・光吉
白露は“はくろ”という秋一番の季語。いつも投句をされて励んでおられる光吉さんを注目しております。『身震いす』の発句もうまく出ましたね。秋にむかう心の緊張感の表現が秀逸でした。また佳い句を待っております。

佳作
さやさやとビニールハウスに秋立ちぬかやつりぐさとねこじゃらしゆれ (短歌)新潟県・三浦ユリコ
ビニールハウスのなかの秋…に気付いた作者。かやつり草もねこじゃらしも野生のままに栽培の植物にまぎれて育つのですね。『さやさや…秋立ちぬ』の呼応がいい。ああ、ここにも秋が…と思わせ、一層の共感となった。

佳作
花束が道草させぬ定年日 (川柳)神奈川県・だじゃれまん
定年日と花束のとり合せは定番だが、中句『道草させぬ』がいかにも川柳の妙味を思わせ、何とも複雑な気分が読者にも伝わってくる。なかなかにうまい一句。寂しさもちょっぴり見え隠れして共感できる心の風景である。

佳作
『早秋』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・朝顔

『早秋』

夏休み明けのお稽古で

ひまわりを生けました

早秋の風のなかで

ひまわりの

もうひとつの表情を

見つけました

花にも

うつろうこころが

あるの

生け花で使用した『ひまわり』。真夏のシンボル・元気印・幸せのいろ等のイメージの花。でも、そのひまわりだって秋の訪れの頃には、別に見える。それは、作者の心の投影。その投影が詩になりました。寄物陳思です。

佳作
“もう”なのか“まだ”か知らねど四十五となりし君へと買う白髪染め (短歌)徳島県・あいらむ
“もう”と“まだ”…の入った短歌は、そうあるものではありません。『四十五となりし君』を三・四への句またがりで真ん中に置いて、下句へとなだれる表現法が、確かな音律となって平明ながらも、意味の深い作品となりました。

佳作
冬眠ができる生き物羨んで (川柳)三重県・忘れな草
考えてみてください。人間は本当は“裸虫”です。無防備な体の動物故に本当はなまけものなの。寒いから着る。家に籠る。暖房器具に頼る。本当に自力で冬眠するにはものすごい野生の適応力が必要。でも羨ましいね。視点が良かった!

佳作
白湯こぼし微笑み合える共白髪 (川柳)北海道・福助
『白湯こぼし』と『共白髪』の上下2句の呼応がいい。マイナスを微笑みあえるほどに達観しているのか、呆けてしまったかは別として、作者の優しい気分も実にいい。高齢化の進む時代のものの見方を思わせて、川柳らしい作品だった。

選者からのコメント

白露(はくろ)は二十四節気のひとつで、秋分前の15日ですから9月7日頃にあたり、秋へなだれるそこはかとない空気感を含んで、最も日本的情緒の動く季節でもありましょう。今回の入賞作品の特徴のひとつに、白のイメージがありました。夏の光から移りゆくしらじらとした光の感じを日本人は敏感に感じるのでしょう。四季のめぐりは日本人に独特の感情表現をさせますが、若い人々の感覚はそれらを弾き、新鮮でした。新時代の感覚に期待します。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。