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Kanon投稿

 

Kanon投稿入選作 2009年11月25日
第39回 テーマ『祭〜人生のなかのまつり』

毎月、WEB投稿作品の中から選んだ作品を、『Kanon』お勧め作品としてHP上で発表いたします。
大賞1名 特選3名 佳作10名には、『Kanon』編集部からステキなプレゼントをご用意しております。
※選者の歌人・朝倉富士子氏より、各作品への選評が寄せられたので、賞とともに発表いたします。

大賞
故郷の母から届く絵手紙の大根正しく面取りされて (短歌)奈良県・小文
一読して、ふうっと胸のうちが温かくなりました。母の絵手紙・大根の面取り…それも正しくです。これだけの歌材ですのに、味わいの良さ、後を引く思いは何なのでしょう。表現はとてもわかりやすく、淡々としております。が、上三句と下二句が快く響き合い、素直に、無駄なくすんなりと場景をわからせてくれる。結句の『…されて』と流したのも効果的。そこからはじまる物語は母と子の折目正しくも温かい暮らしの匂いを——、読者の心に沁み入るでしょう。

特選
黄葉の華やかなるも祭りかな (俳句)北海道・工藤光吉
工藤さんは、本当に毎回、無欠詠ですね。継続は力なりと申しますが、その頑張りに、いつも感心しております。今回の作品、てらいなく“祭り”を詠じましたね。黄葉のはなやぎを“紅葉”としなかったところが良かった。自分らしい物の見方、感じ方が、文芸には要求されます。これからを楽しみにしております。

特選
本当の自分が踊る夏祭り (川柳)神奈川県・菜の花大陸
まったくその通り! と声をかけたくなるような句です。『本当の自分』は、社会や家庭の中で要求される節度の枠のなかで縮まっていたのでしょう。踊りながらワクワクしている自分、のびのびと手足が動く快感のなかで嬉しそうな自分を発見した時、「あっこんな自分の心の動きもあるんだ!」と感動し、一句にした。そこに人生は広がる!

特選
担任を御輿のようにかつぎあげ胴上げをする三月の空 (短歌)青森県・麻倉遥
結句の『三月の空』がとてもよかった! 春の希望・喜び・そして一抹の淋しさなども感じさせる。『三月』という季節の祭を詠じた麻倉さんのお手柄の一首でした。表現に無駄がないぶん、読者がその行間を埋めて想像できる作品が佳いのです。胴上げされる先生と生徒との感情の交じり合った三月の物語は、結句の名詞止めで決まりました。

佳作
『花舞台』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・朝顔

『花舞台』

一年間の思いをぶつける展覧会
歌も踊りもない静かな祭り
訪れる人たちのざわめきが
祭りの雰囲気を醸し出す
今年も花舞台の幕が開き
私は心のなかで
花と歌い踊る

展覧会は『花舞台』だと作者は思う。人々が踊ることも、声高にはしゃぐこともなく、静かな心の波動が高まるという静的な祭を詩にした。そう、描き手と観る人との間には、激しい興奮のエネルギーが動く祭なのです。

佳作
祭りきて一日の雫掬ひけり (俳句)東京都・小池富美子
中の句『一日の雫』としたところに工夫を見ました。一年の時間からすれば、祭という濃密な時間は、どろりとして、ひとぬぐいしたいものなのでしょう。すらりと『一日の雫』と表現できたセンスをいただきました。

佳作
手のひらに書いた三人(みたり)を飲み干して面接室のドアを押す午後 (短歌)東京都・林 由実
現代の厳しい就職事情の一首。人という字を三人も飲み干すほどに面接はきつい状況なのですね。根性の在りようが伝わってくるのですが、午後の明るい陽ざしは何か希望へもつながりそうで、意外に明るい一首でした。

佳作
観客に台詞教わる村芝居 (川柳)神奈川県・だじゃれまん
色々な山間地には伝統的な土地の歌舞伎や、人情ものの芝居などがあり、楽しみなもの。もちろん演ずる人も観る人も顔見知りだったりして…。そんな慕わしい雰囲気の伝わる川柳らしいピリっとした中句がよかった!

佳作
旧姓で呼ばれ振り向く秋まつり (川柳)北海道・福助
エッ、私を呼ぶのは誰? 「あらあ…なつかしい○○さんね。元気だったあ!」など、祭のにぎわいの中で、そこだけ時間の止まる瞬間をとらえた、いかにも川柳ならではの機微のある一句でした。上出来でしたね。

佳作
成人式は東京オリンピックの年なりき高度成長のはじまりだったか (短歌)新潟県・三浦ユリコ
成人式、東京オリンピック、高度成長の始まり、何かニュースのタイトルめいた三題噺が歌材となっためずらしい一首です。結句に『…か』と疑問形で止めたのは、上句を『なりき』と過去完了形にして仕上がりがよかった。

佳作
祭りの日初孫抱いて娘来る (川柳)東京都・赤トンボ
なんとも愛しさと、にぎやかさとがまじり合った祭の日。初孫を抱いて帰ってきた娘と親とに経過してきた時間を止める祭という非日常。人々はこの非日常に折々立ち止まることで、逆に過ぎた時間を思うのでしょう。

佳作
『画家』 >>『詩』作品を表示する>>『詩』作品を閉じる (詩)神奈川県・武重路子

『画家』

この地の磁場に引き寄せられたあなた
は描く
路地を 扉を
そこを過ぎる風を それを照らす光を 空を
掘り出した原石をカットし 磨いて
美しい宝石(いし)にするように
その全てをあなたの感性で濾過し
うわずみ液で色を溶き
手作りの小さなキャンバスに丹念に塗りこめる
祝祭 この地への あなたの
やがて それは人を惹き込む力を持つ
思わずのぞくと 沈澱したものの中に
ひっそりと
青いケシのように咲く あなたの心が見える
それはあなたの意図しないからくり

題名も『画家』…これは画家の心の中のまつり、ひとりのまつり。作者は客観的に祭の磁場に動いている“ひと”の一部始終を観ながら、その心のまつりを見て心を高ぶらせていく…という二重構造の表現が、面白く楽しかった。

佳作
秋夕焼前衛書道の如き雲 (俳句)福岡県・幻草
『前衛書道の如き雲』の捉え方に拍手です。よく空を観察していると、誠に千差万別の動きをする雲です。自由闊達な筆はこびのような秋雲の様相も天然の芸術作品かもしれません。とても佳かった! 新鮮でした!

佳作
山車を曳く孫がますます近くなる (川柳)三重県・大川 勲
ほんとうに孫は可愛いもの、そして祭日のいでたちの愛らしさに目はいよいよ細くなります。日増しに大人っぽさを増し、皆と山車もひけるようになった。作者の胸の高鳴りが聴こえそうな弾みのある一句です。

選者からのコメント

 人生は祭のようなもの…と、誰かが言った。祭は非日常に身をおいて自らを慰撫する。感謝する。魂を沈める。祭(まつり)はまつるとも言う。白川静代の『字統』によれば、上代は祭祀と言う。祭は人を祭り、祀は自然神を祀るの意となるとあります。
今回の題はなかなかユニークな把握や心映えに支えられ、本質の祭を捉えた作品に出逢うことができ、楽しかった。いつもより作品数は少なかったが、楽しく選歌しました。

朝倉富士子●あさくら ふじこ

1935年生まれ。福島県出身。1966年歌と観照社に入社。1972年、歌と観照賞受賞。1988年、岡山巌賞受賞。『歌と観照』選者、『きびたき』選者、山形県米澤新聞『米新歌壇』選者。福島県歌人会常任委員、柴舟会会員、日本歌人クラブ会員。1997年第一歌集『天の鈴』平成8年度日本歌人クラブ東北ブロック優良歌集賞受賞。著書:歌集『天の鈴』『里の木ものがたり』『日待ち月待ち』『愛しきものの詩』他、古典随想集『今も昔も』他。